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消費者庁の徳島移転問題に対して意見を発出しました

現在、消費者庁の徳島移転について協議がされています。当法人としては、このことについて、次のように反対意見を発出しました。

(セット版)消費者庁等移転に関する意見書(ネットくまもと).pdf

     消費者庁・国民生活センターの地方移転に反対する意見書

 当法人は、消費者被害防止・救済のため、事業者の不当勧誘行為や不当条項使用に対する差止申入れ等を行っている団体であり、平成26年12月17日に消費者契約法第13条第1項に基づき内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体です。

 今般、消費者庁・国民生活センターの地方移転にかかる検討が行われているとお聞きしております。しかし、消費者行政の企画・立案を行うとともに地方消費者行政に対する支援措置を行っている消費者庁や、全国の消費生活センター・消費生活相談窓口のセンターオブセンターとして地方消費者行政の支援等を行う国民生活センターを徳島県に移転することは、これらの機能に致命的な問題を生じさせるものです。

 そこで、当法人は消費者庁・国民生活センターの徳島県移転については下記の理由から、断固反対します。

                           

 1 消費者庁移転反対の理由

 (1)企画・立案機能(立法機能)の低下

 消費者庁は、表示、製品安全、取引の安全、地方消費者行政、消費者教育等幅広い分野にわたる消費者行政の企画・立案機能を持っています。この機能を果たすためには、国会・政党に頻繁にアクセスするとともに、他省庁との調整や審議会・検討会の開催、消費者団体や事業者団体との意見交換等の関連業務を日常的に行うことが必要です。仮に地方移転ということになれば、これらの業務は大幅に制限されることになり、機能の低下は必至です。

 実際に、当法人が事務所を置いている熊本県においては、消費者行政を強化するために、県庁舎外においていた消費生活センターを平成21年度から県本庁舎に移設しました。このことにより、財政部局、人事部局、組織部局をはじめ、市町村行政担当部局、各種法執行担当部局、福祉担当部局との協議が速やかに実施できるようになり、消費者行政の強化につながったと聞いております。また、県内市町村の消費者行政の中核としての機能も強化され、結果、消費者行政の専管課設置につながったときいております。

 このように、消費者行政を実効的に実施していくためには、まずは、予算、組織、所管法令、人員という基礎を築いたうえで、議会・他省庁・関係団体と日々協議して、予算や人員獲得、法令整備にかかる業務を積み重ねていくことが必要です。消費者行政全体を企画・立案を行う消費者庁は、そのようなことが行える状況の下で業務を行うべきです。

 また、特に地方消費者行政にとっては、消費者庁が予算措置をしている地方消費者行政活性化交付金が非常に大きい位置を占めています。地方移転すると、財務省との折衝能力が低下することが懸念されます。移転により、消費者庁が措置する地方消費者行政への予算額が減少することになれば、その影響は全地方自治体の消費者行政におよび、全国的な消費者行政の衰退につながり、ひいては、国民の安全・安心な消費生活を破壊につながりかねません。

 よって、移転には絶対に反対します。

 (2)司令塔機能の減退

 消費者庁は、現在38本の法律を所管していますが、多くは他省庁との共管となっています。これは、消費者庁が消費者の視点から我が国の行政のパラダイム転換を目指すために創設され、司令塔としての役割を強く期待されているためです。そのためには、情報収集・分析機能を充実させるとともに、関係省庁と頻繁なアクセスを行うことが不可欠です。地方移転によってこうしたアクセスが阻害され、機能低下することが懸念されます。よって、移転には絶対に反対します。

 (3)執行機能の大幅低下

 執行については、消費者庁と地方自治体(都道府県)が担っていますが、多くは消費者庁が行っています。行政処分を行うには当然の事ながら事業者からの事情聴取や立入調査等の事実調査が必要ですが、事業者の多くが首都圏に集中しているため、事実調査の多くも消費者庁を含む首都圏(1で行われることになります。

 このため消費者庁が地方に移転されることになると、事実調査に多くの時間とコストがかかることが予想され、迅速な執行が阻害される可能性が極めて高いと思われます。このように、消費者庁の地方移転は執行機能の大幅な低下をもたらします。

 よって、移転には絶対に反対します。

 2  国民生活センター移転反対の理由

 (1)センターオブセンターズとしての機能の低下

 国民生活センターは、センターオブセンターズとして、全国の消費生活センターに対する指導・助言等を行うとともに、バックアップ相談を実施しています。また、商品テストや研修実施により、地方消費者行政を支援しています。

 これは、国民生活センターに、省庁や各事業者から様々な知見や情報が集まるからであり、また、消費者行政・相談業務に長く従事している職員・相談員等の人材がいるためです。

 今回検討されている徳島県移転により、各省庁や各事業者からの様々な知見や情報の収集が困難になることが予想されます。それは、先ほどの、熊本県の事例で述べた通りです。また、商品テストと研修施設は今回の移転要望には含まれていないとのことですが、相談機能とテスト機能が切り離されることは、相談処理能力の低下につながる恐れがあります。

 さらに、国民生活センターで消費生活相談等に従事している人材全員が移転するとは思われず、消費者行政・消費生活相談の中心で活躍していた人材を消費者行政が失うことにつながります。これは、消費者行政にとって大きな損失であり、また、地方消費者行政に対する指導・助言機能が大幅に低下することになります。

 このことは、全国的な消費生活相談機能の衰退につながり、ひいては、国民の安全・安心な消費生活を破壊につながりかねません。

 よって、移転には絶対に反対します。

 (2)消費者庁とはじめとする省庁との連携機能の低下

 消費生活相談には、社会の問題点が現れます。そうであるから、今までも、消費生活相談の分析が、法や制度の新設や改正につながってきました。この機能を中心で担ってきているのが国民生活センターです。

 実際に、国民生活センターは、消費者庁・消費者委員会や他省庁と随時連携をとりつつ業務を遂行しています。具体的には、全国から集まってきた被害情報を分析して注意喚起や各省庁への提言を行う際に関係省庁とのすりあわせを行ったり、消費者庁との間で情報分析についての定期的な協議会を設けたりしています。

 これらの業務は単にデータベース上の情報を分析しただけでは不可能であり、他省庁担当者との法令解釈や方向性についての密な協議が不可欠です。

 地方移転によってこれらの機能が大きく後退する可能性があり、移転には絶対に反対します。

  消費者委員会

  現時点で消費者委員会の移転は提案されていませんが、万一同様の移転が提案されるようであれば、消費者委員会についても地方移転に反対します。

 消費者委員会は、少数の非常勤の委員によって構成され、消費者庁等からの諮問事項を審議するほか、任意のテーマを自ら調査して他省庁への建議等を行うという監視機能を有しています。他省庁からの諮問の場合に諮問した省庁等との連絡を密にすることはもちろん、建議等の監視機能の行使においても、他省庁や関連事業者、事業者団体からの事情聴取・協議も頻繁に行うことになります。この場合、消費者委員会の会議の場にこれら関係省庁、事業者等を招へいするほか、委員会側から直接赴いて事情を聴取し、或いは改善の必要性について説得することも行われています。

 地方に移転するとなると、これらの権限を十分に行使する機会を確保することが困難になる危険性が高くあります。

2015-12-20

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