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地方消費者行政の恒久的な財政措置等に関する要望書を発出しました

当法人は、国の関係機関あてに、地方消費者行政の恒久的な財政措置等に関する要望書を次の通り発出いたしました。

〔文書の内容〕

地方消費者行政の恒久的な財源措置等に関する要望について

  当法人は,消費者被害の防止・救済のため,事業者の不当勧誘行為や不当条項使用に対する差し止め・申し入れ等を行っている団体であり,平成26年12月17日に消費者契約法第13条第1項に基づき内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体です。

 国民生活の安定の基礎を担っている地方消費者行政を安定的に推進させるために次のことを要望します。

 1 要望の主旨

(1)国において、地方消費者行政を安定的に推進させるための恒久的な財源措置を行うこと。

(2)少なくとも、新規事業が実施期限を平成29年度まで、また、実施事業の期限を5年から9年と制限している、現在の要綱等を改めること。

(3)地方行政において消費者行政がしっかりと根付くように、核となる地方消費者行政の担当課を育成して、担当者を配置するような政策、施策を国において行うこと。

 

2 要望の理由

 平成20年度からの消費者行政一元化の流れの中で、地方消費者行政の活性化が必要だとして、地方消費者行政活性化基金を造成するための交付金が国により措置されました。これにより、地方消費者行政は、大きく推進されました。

 加えて、平成21年9月に、消費者庁及び消費者委員会設置法の施行とともに、消費者安全法が施行され、消費生活センターが法的に位置づけられるなど、地方消費者行政を含む我が国の消費者行政が大きくステップアップする契機となりました。

 その後、地方消費者行政活性化基金は地方消費者行政推進交付金に移行され、今日まで継続されています。また、この間、数々の法制定・改正が行われ、国及び地方による消費生活相談や消費者教育等の取組により、消費者を取り巻く状況については向上してきました。

  しかしながら、一方で、いまだに多くの課題が残されています。

 例えば、平成27年度に消費者庁が実施した消費者意識調査では、消費者被害やトラブルに遭った人が10.9%に上っています。また、消費者被害額は約6.1兆円と推計され、これは平成25年度調査の約6.0兆円、平成26年度調査の約6.7兆円とほぼ同水準であります。

 このような中で、国におかれては、地方消費者行政推進交付金の活用期限を事業ごとに設定されているため、地方において事業を継続するためには、期限が切れる事業から順次、自主財源化していくことが求められています。しかしながら、現実には、厳しい地方財政において財源を捻出することは容易ではありません。このような状況下、平成21年度に造成された消費者行政活性化基金で任用されている消費生活相談員の継続任用すらできないおそれが生じてきております。

 また、新規事業を実施できるのは平成29年度までとなっていますが、そのような規制をすることにより、日々、新たな問題が生じている消費者被害の現場に対応ができなくなるおそれが大いにあります。

 そして、何より、交付金措置を活用できるのが平成39年度までと制限をされていることと、先述の様々な制限により、地方における消費者行政の大幅な後退が危惧されるところです。

 「消費者行政推進基本計画」(平成20年6月27日閣議決定)では、各自治体が設置する消費生活センターを一元的な消費生活相談窓口と位置付け、緊急時の対応や広域的な問題への対処等のために全国ネットワークを構築することは、国の要請に基づくものであり、法律にも位置付けを行うことを踏まえ、国は相当の財源確保に努めるとされました。

 実際、国においては、地方消費者行政活性化交付金(消費者行政活性化基金造成にかかる措置)や地方消費者行政推進交付金を措置され、地方消費者行政推進にかかる支援をされています。しかしながら、前に述べたように、支援にかかる様々な制限があることにより、地方消費者行政は再び衰退する岐路に差し掛かっているのです。

  地方自治体が消費者行政を行い、国民の声に十分に対応し、それが国に集約されることが、制度改革や行政規制を行う国の消費者行政を行うことにつながっています。今後、国の予算措置がなくなることにより、地方自治体が消費生活相談を取り止める、もしくは消費生活相談は受けてもパイオネットに入力をしなくなるといった事態になれば、国の消費者行政そのものが立ち行かなくなるはずです。

  現在の日本においては、経済や社会の複雑化、地域社会の絆の弱体化、情報化社会や高齢化社会の進展を受け、消費生活問題、多重債務問題は、複雑な要素を多数含み、解決が困難なものが多くなっています。この解決のためには、消費者行政が、地域社会におけるネットワークの中心となり、地方自治体内部の連携を図っていくことが必要です。

 そのためには、消費者行政を担い、地域ネットワークのキーとして機能することができる消費者行政職員が配置されること、ひいては、消費者行政担当課が設置されることが必要であると強く認識をしております。

  「生産」を川の上流に例えると、「消費」は川の下流と言えます。その川のよどみに、社会の問題が現れるのです。消費者ではない国民はいないと言われている現代社会において、川の下流のよどみに現れる問題は国民全体の問題と捉えることができると思います。

 住民一人ひとりの苦情相談を、社会に対するパブリックコメントとして捉えて、社会の問題点を消費者の視点から改善することは、国民生活の安定の基礎づくりに必要不可欠なことです。

 このように、国民生活の安定の基礎を担っている地方消費者行政を安定的に推進させるため、予算措置をはじめ、必要な措置を国においてとっていただくよう要望を行うものです。行政への送付資料①.pdf

2016-12-30

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