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特定商取引法の書面の電磁的方法を可とする法改正に対する意見書を発出しました

 特定商取引法の書面の電磁的方法についての検討がなされています。このことについての意見書を当法人から関係機関に発出しました。

 意見書は次の通りです。

特定商取引法の書面の電磁的方法を可とする法改正に対する意見書

 1.意見の趣旨

 消費者庁は特定商取引法で交付義務が定められた書面について、電磁的方法による交付を認めることについて検討を行っておりますが、下記の通り、契約の内容、契約に至る経緯や契約締結の場所、当該消費者のデジタルスキルなどを考慮せず、一律に電磁的な方法による交付を認めることは、非常に大きな問題があると考えられますので、法改正に当たっては、電磁的な方法を認めても良いケースを限定する必要があると考えます。

 各関係機関及び関係各位におかれましては、この問題について拙速に結論を導くことなく、消費者の立場に立って具体的に検討を行い、適切にご対応いただきますようお願いいたします。

 2.理由

  昨年以降、コロナ禍の中で在宅勤務や出張・会議のオンライン化が必要とされ、日本社会のデジタル化の遅れが指摘されました。

 確かに、デジタル化を進展させることは、今後の日本社会の発展のためには避けて通れない課題ですが、デジタル化は万能ではなく、その長所と弱点を良く理解したうえで取り組みを進めなければ、逆に、不便で効率の悪い社会を招くことになりかねません。

  そのことは書面についても言えます。書面の作成や修正にはデジタル技術は便利ですし、ネットの中で掲示するのならば、わざわざ印刷する必要はありません。

  しかし、対面で人と会って説明を受ける場合は、電磁書面をパソコンやタブレット、スマホなどで読む場合、紙の書面と比べると、全体像を把握しづらく、読むのに時間がかかり、重要なポイントがどこにあるのかも分かりづらいという弱点があります。特に、消費者のデジタルスキルによっては、読んで理解するのに、紙の書面以上に時間がかかり、理解することがより難しくなることもあります。

 従って、特に対面での販売や契約の場合には、消費者のデジタルスキルに十分な配慮が必要であり、少なくとも電磁的な方法での交付を断りにくいような環境を作らないよう、何らかの対策が必要です。もし、その場で時間をかけてしっかり読むことがはばかられるような雰囲気があれば、消費者は十分な理解をしないままに契約し、後日のトラブルの原因にもなりえます。

  一方、ネット販売やネットを通して契約を締結する場合には、書面を電磁ファイルで提供しても問題は少ないとも考えられますが、その書面をネット上に一般公開することを義務付けて、契約を検討している消費者が事前に確認することができるようにするなど、事業者にとってメリットとなるだけでなく、消費者にとってもメリットと安心感をもたらすような政策がトラブル回避のためには重要と考えます。 

 なお、訪問販売の場合においては、消費者は事前の検討など行っておらず、訪問を受けたその場で契約について検討することになるため、このような類型では、先に述べたような電磁書類の弱点、すなわち読むのに時間がかかること、全体が把握しづらいこと、重要なポイントが分かりにくいこと、などを考慮すれば、訪問販売(100%対面契約)では書面の電磁的な方法による交付は原則として認めるべきではないと考えます。

 その他にもクーリングオフの対象となっている契約類型については、同様の理由から、通信販売を除いて、書面の電磁的な方法による交付は認めるべきではないと考えます。また、それ以外の類型においても、消費者が高齢者であるなど、電磁的な方法による交付がトラブルの原因となりかねないようなケースでは、原則として紙の書面での交付を行うとするなど、消費者の立場に立った配慮が不可欠と考えます。もし、拙速に、書面の電磁的な方法による交付を一律に認めるならば、無用の消費者トラブルが増えるだけでなく、悪質事業がこれを悪用することも容易に予想されます。

 従って、書面の電磁的な方法による交付を認めて良いケースとはどのような場合であるのか、具体的かつ詳細に検討を行い、一定の制限を設けたうえで認めることが不可欠と考えます。

 

2021-03-14

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