活動状況

株式会社ARROWS(アローズ)に対する申入れを終了しました。

 化粧品等の通信販売を行っていた株式会社ARROWS(アローズ)(東京都渋谷区。以下「同社」といいます。)のウェブサイトの購入ページには、景品表示法の有利誤認表示と疑われると同時に令和4年6月施行の特商法に反すると疑われる部分があったことから、当法人は景品表示法等に基づき当該表示の修正・削除を求める旨の申入れを行いました。

 (当法人の申入れ)

第1 貴社ウェブサイトの表示について

1 申入れの趣旨

⑴ 当法人は,貴社に対し,下記対象となる表示記載の表示を行うことの停止を求めます。

(表示媒体)

 貴社ウェブサイト

(対象となる商品)

 「CRYSTAL WHITE」(クリスタルホワイト)

(対象となる表示)

 対象となる商品を「初回5g×5本が2,980円(税込)」「送料無料」などと表示し,同商品を2,980円で購入可能であるかのように示す表示。

⑵ 当法人は,貴社に対し,上記⑴対象となる商品を2,980円で購入可能であるかのように示して消費者に対して勧誘をしないことを求めます。

  

2 申入れの理由

⑴   景品表示法上の有利誤認表示にあたること

 貴社がウェブサイトで販売する「CRYSTAL WHITE」(クリスタルホワイト)(以下「本件商品」といいます。)を「定期コース」で購入する場合,貴社ウェブサイト上では,上記対象となる表示によって,初回5g×5本だけ2,980円(税込)(送料無料)で購入可能であるかのような広告がなされています。

 しかし,実際は,貴社ウェブサイトに表示されている「CRYSTAL WHITE チャレンジコース」(以下「同コース」)の申し込みをした場合,解約の連絡をしない限り自動で商品が届けられるばかりか,2回目以降は6,974円であって,したがって,初回1袋分のみ2,980円(税込)で購入が可能であるかのような取引条件の表示は,実質的に見れば,実際の価格とは異なる表示です。

 また,同コースに申し込んだ場合,初回の休止・解約の場合は定価との差額(8,910円)が発生するものです。

 そして,同コースの購入の条件に関する記載は,貴社のウェブサイト上,本件商品の購入手続に進むための「いますぐお得に注文する」という緑枠の下に,「2,980円(税込)送料無料」という表示のポイントと比べて著しく小さい記載があるのみです。したがって,消費者は継続購入の条件を見ないままに,購入手続に進む可能性が高いといえます。

 さらに,緑枠をクリックして購入手続きを進めた最終確認画面においては,1回目の購入額である手数料も含めた3,280円が表示されるのみであり,上記価格で購入できると誤認して注文を完了する可能性も高いといえます。

 初回お試しを謳っている他の事業者の広告を見ても,初回の割引価格の購入と,2回目以降の継続的購入は完全に切り離されているのが通常であり,貴社のように継続購入の条件を付帯させておきながら,初回の価格を強調して表示すること,クーポンを使用すればお得に購入できるかの如く強調することは,他の事業者が従来行ってきたお試し商法によって消費者に浸透した「お試し」広告に対する一般的な認識を悪用するものといえます。

 したがって,貴社ウェブサイトの表示は,本件商品を初回5g×5本だけ2,980円(税込)(送料無料)で購入可能であるかのように示す点で「商品...の取引条件について,...実際のもの...よりも取引の相手方に著しく有利」(景品表示法30条1項2号)な表示に該当します。

 よって,以上のとおり,当法人は,貴社に対し,上記景品表示法違反の表示について,景品表示法30条に基づき,その停止を申し入れます。

⑵ 消費者契約法の不実告知(消費者契約法4条1項1号)にあたること

ア 重要事項性

 上記のとおり,本コースにおいては,多数の消費者が,貴社ウェブサイトの広告を見て,本件商品が初回5g×5本だけ2,980円(税込)(送料無料)で購入できると思い,1セットのみを購入する意思で契約を申し込んでいます。

 したがって,初回5g×5本だけ2,980円(税込)(送料無料)を購入できる(1セットの購入でやめることができ,それ以上の購入は消費者の自由である)ことは「物品......の取引条件であって,消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの」(同条5項2号),すなわち「重要事項」に該当します。

イ 事実と異なることを告げること

 貴社ウェブサイト広告では,本コースでは初回5g×5本だけ2,980円(税込)(送料無料)で購入可能であるような表示がされていますが,実際には,「同コース」の申し込みをした場合,解約の連絡をしない限り自動で商品が届けられるばかりか,2回目以降は6,974円であって,したがって,初回5g×5本だけ2,980円(税込)(送料無料)で購入可能であるかのような取引条件の表示は,事実と異なります。

 これに対しては貴社からは,2回目以降の条件についても,ウェブサイトに記載しているとう反論も予測されるところです。

 しかしながら,貴社の行っている販売形態は,初回分が低額であるかのように見せかけ,2回目以降の高額な代金を消費者に請求する形態ですから,社会通念からしても,このような契約を指して,「初回5g×5本だけ2,980円(税込)(送料無料)で買える」とはいえません。

 すなわち,本件商品を「初回5g×5本だけ2,980円(税込)(送料無料)」で買えると表示すること自体が事実と異なる表示であり,この表示がある限り,これと矛盾する付帯条件をいくら記載しても,不実性は払しょくされません。

ウ 「勧誘」(同条柱書)にあたること

 貴社ウェブサイトは。個別の消費者の意思形成に直接影響を与えるものであり,「勧誘」にあたります(最高裁第三小法廷平成29年1月24日クロレラチラシ配布差止請求等事件判決参照)。

 よって,消費者契約法の不実告知に該当しますので,かかる勧誘をやめるよう求めます。

⑶ 特商法12条の6にも反すること

ア 貴社ウェブサイトの表示は,特商法12条の6柱書の「当該特定申込みに係る......手続が表示される映像面」にあたり,購入条件の表示は前述のとおり事実とは異なるのですから,「......当該手続に従った情報の送信が通信販売に係る売買契約......の申し込みとなることにつき,人を誤認させる表示」(同条2項1号)及び「前項各号に掲げる事項につき,人を誤認させるような表示」(同条2項2号)にあたり,この場合,特定申し込みをした者は当該契約を取り消すことができます(同法15条の4)。

イ したがって,貴社のウェブサイトにおける表示は特商法にも違反しますので,かかる行為をやめるよう求めます。

 

(同社の対応)

 以上に対して、同社からは

①2022年9月7日付で同社が行っている表示は国民生活センター等の行政機関のご指摘を踏まえて修正し、『CRYSTAL WHITEチャレンジコース』に関する記載は定期購入であることを明確に表示しているので、有利誤認や不実告知には該当しないという認識である。、『CRYSTAL WHITEチャレンジコース』に関する記載について、表示として足りない理由とどのような修正が必要が教示されたい。

②同社のウェブサイトに『初回お試し』とは一切記載していない。

③「通信販売の申し込み段階における表示についてのガイドライン」や行政機関の指導を踏まえ、本件コースの購入条件を『CRYSTAL WHITEチャレンジコース』に関する最終確認画面に網羅的に記載していると認識しており、どのような記載が足りていないか教示されたい。

 という回答があり、当法人はこれに対して令和5年1月12日付で修正を求める箇所を指摘するとともに再度申入れを行いました。

 そうしたところ、2023年2月9日付で同社から回答があり、クリスタルホワイトの広告配信を既に停止しており、今後同社がクリスタルホワイトの広告を配信する予定もなく、以後の対応は必要ないと考えており、また、その予定もないという回答がありました。

 当法人において確認したところ、確かにクリスタルホワイトの広告は発見できませんでしたが、念のため、令和5年3月15日付お問い合わせでクリスタルホワイトの広告配信を停止した時期はいつであるかについてお問い合わせをしましたが、保管期間経過につき同社への配送はされませんでした。

 これに対して、令和5年4月20日付で同社から、令和5年3月15日付『お問い合わせ』の書面及び不在通知を受領していないとの回答がありました。

 

(その後の経緯)

 その後、令和5年4月3日付官報によって同社が令和5年3月31日の株主総会の決議により解散したので、同社に債権を有する方は本広告記載の翌日から二箇月以内に申出られたい、同期間内に申出がされないときは清算から除斥するとの広告がなされていることが判明しました。

 当法人としては、問題と考えていた広告がすでにないこと、同社が解散済みであるとの広告がなされていることから、申入れを終了することにいたしました。

 

(経緯)

・令和4年9月12日付で当法人より「申入書」を同社に送付

・2022年9月27日付で同社より回答あり

・令和5年1月12日付で当法人より「ご連絡」を同社に送付

・2023年2月14日付で同社より回答あり

・令和5年3月15日付で当法人より「お問い合わせ」を同社に送付したが、保管期間経過により同社には到達せず(ただし、同社より「お問い合わせ」に関する書面及び不在通知を受領していないとの回答あり)

・4月6日付で当法人より「申入れ終了通知」を同社代表清算人に送付                                                                                            

2023-06-06

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